以前の記事で学校とオルタナティブスクールとフリースクールの三者の違いを書きました。
ここでも触れたオルタナティブスクールとは、学校教育法で国から認められた学校ではないスクールのことを指します。(いわゆる無認可校)
その中には、イエナプランの学校やシュタイナー学校などがあります。
これらは独自のカリキュラムが組まれた学校であり、カリキュラムがはっきりしていることからフリースクールとはあまり混同されません。
しかし、私がスタッフをしているデモクラティックスクールはオルタナティブスクールの一種でありながら、不登校支援が主な活動目的であるフリースクールと「何が違うの?」とよく尋ねられます。
デモクラティックスクールって何?という方はこちら↓
なぜ混同されるかというと、デモクラティックスクールにはカリキュラムがないからです。
そうすると、子どもたちが自由に過ごすということで居場所活動やそれに類するフリースクールと似てると思われているのです。
でも、デモクラティックスクールはあくまでオルタナティブスクールの一種であり、独自の教育法を行っている学校です。
では、何が違うか、そしてそこにどんな意味があるのかをまとめてみます。
私自身がデモクラティックスクールのスタッフなこともあって、その良さを伝えるような書き方になってしまいますが、フリースクールが良くないというわけではないので、悪しからず!
①スタッフが活動を提案しない
デモクラティックスクールでは大人から活動の提案をしたり、事前に活動を準備しておくことはありません。
スクールでの活動は全て子どもが決めます。個人は人に迷惑をかけない限り何をやるのを自由ですし、みんなを巻き込むイベントなら自分で調整しなければいけません。
これによって子どもは自己決定や自由と責任について学びます。
子どもが何をやるのも自由ですが、やると言ったからには自分でやる。途中で辞めるのも自由。
だからと言って自己責任を押し付けるわけではなく、求められた場合はスタッフもサポートします。
多くのフリースクールは、地域の人を招いてその人たちが得意なことを披露してもらったり、スタッフで決めてプログラムに応募したりします。
むしろそういう体験活動が充実していることを売りにしているところも多いです。
しかし、デモクラティックスクールはそのようなことをせず、子どもたちが動き出すのを徹底的に待ちます。
体験から学ぶ、ということより、子どもが自分で決める、ということを大事にしています。
私自身はこの方針が良いのか、子どもに活動の提案をした方がよいのか、迷っていた時期がありました。スクールを始めた当初は子どもに活動を提案していました。
しかし、スタッフが活動を提案していたら、子どもは自分の興味関心にヒットするまで待つ、受け身の姿勢になると感じました。
そこで、私のスクールもデモクラティックスクールの方針に則ることにしました。
②子どもがスクール運営に携わる
デモクラティックスクールでは会計・人事・庶務といったスクール運営にも子どもが携わります。
例えば似たようなスクールでサマーヒルスクールというのがあります。イギリスにある世界のフリースクールの源流と言われるスクールです。
カリキュラムなし、子どもが自由に活動を決める、という点は共通していますが、大きな違いはこの子どもが運営に携わるかどうかがあります。
サマーヒルスクールは「子どもの学びに関わるところは自由に」という方針でやっていて、運営に携わることは子どもにとって必要のないことだと考えています。
このサマーヒルスクールに則ってフリースクールではお金やスタッフ募集に関わることは、大人が決めているところがほとんどです。
デモクラティックスクールでは子どもの自由や権利の範囲を広げ、それを保障するために、子どもも運営に携わることとしています。
しかし、デモクラティックスクールでも運営に携わる機会は設けるものの、強制ではないため、意外と積極的に関わろうとする子どもは多くないのが実態です。
私のスクールでも、少しずつお金のことやボランティアさんのことなどを、子どもと話し合い始めたところです。
③子どもと大人が対等である
デモクラティックスクールでは大人の言うことを聞かなければいけない、というようなことはありません。
大人でも言っていることが違うと思ったら反論することができます。
なんなら人事権もあるので、スタッフをクビにすることができます。
それぐらい子どもと大人は対等ということです。
後述しますが、全体に関わることはミーティングで決めていき、その際に全員が平等に一票を持ちます。(多数決で決めるというわけではないですが)
フリースクールでは子どもがみんなで決めたルールを破ったりしたときにスタッフが注意したり、トラブルがあったときに大人が仲裁に入ったりすることがあります。
その方が手っ取り早く治安が維持される側面もありますが、デモクラティックスクールでは子どもが大人に縛られず、一人の人格として尊重するということを大事にしています。
④大事なことはミーティングで決める
デモクラティックスクールは民主的な学校という意味です。
民主というのは、その学校の子ども・スタッフ一人一人がスクールの中心ということです。
ですので、個人がどうするかは自由ですが、スクール全体に関わることはその一人一人が納得する形で決めます。
その手段が対話、つまりミーティングを持つことです。
これは多くのフリースクールでも取り入れられていることですが、その根底にある子どもと大人が対等、運営に関わるあらゆることもミーティングで決める、といった違いがあります。
このミーティングがデモクラティックスクールの肝だと私は考えていますし、デモクラティックスクールを卒業した子たちはとことん対話して全体の中で最適解を出すのが上手な子が多いです。
そういった子たちがより良い民主主義社会の担い手になってくれると思います。
⑤理想とする子どもの姿を規定しない
デモクラティックスクールでは大人が子どもを評価することがありません。
子どもと大人は対等ですから、大人が意図する子どもの姿になってほしい、というような子どもの見方はしません。
ありのままの子どもが、自分の力でどう育つかを楽しみにして、それをサポートしていくだけです。
でも多くのフリースクールでは目指す子ども像についてスタッフ同士で話し合いをしたり、活動に落とし込んだりします。
それ自体は学校として大事なことですが、デモクラティックスクールでは子どもを育てるというより、一緒に共同体をつくっていくことを教育の場として行っている感じです。
デモクラティックスクールは子どもが自ら育つのをサポートする学校
デモクラティックスクールには「本来人間には自ら学ぶ力がそなわっている」という理念があります。
どれもそれを体現しようとした方針だと思います。
子どもが自分自身で育ち、自分の人生を生きて、自分の幸せを見つけ出す。
それがデモクラティックスクールの目指すところなのかなぁと思います。
一方、フリースクールはそれぞれの学校で目指しているもの、方針が千差万別です。
なので本当は一口に、フリースクールとの比較!などと言うことはできません。
今回はデモクラティックスクールの特徴を伝えるために、あえてそのような言い方をしましたが、私がこれまで見てきた一部のフリースクールや世間のイメージで比較したまでです。
一つ一つのスクールが違って当たり前なので、ぜひ入学を検討されている方はご自身の目で見てくださいね!
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